自動車ホイールアライメントと交通事故
[目次]
(1)ホイールアライメント
(2)車検時サイドスリップの罠
(3)リアのトーンで直進姓が決まる
(4)リアのトーンと交通事故
(5)4輪アライメント計測装置の疑問
(6)スポーツ走行時のアライメント設定
(7)スポーツ走行時のタイヤ空気圧
*説明文中の図解は
http://www.ucatv.ne.jp/~yokotetu/auto0001.html
にあります。
(1)ホイール アライメント
キャスター:タイヤを横から見た場合、サスペンションがどの
くらい傾いているかの角度です。
キャスターに限っては通常フロントのキャスターを
指します。
一輪車のサドルを持って押す場合、垂直の状態では
なかなか真っすぐに押せませんが、サドルを斜め
後ろから押せば真っすぐに押しやすくなります。
このキャスター角は一般的には調整できません。
調整可能な車には、
*テンションロッドがある車(AE-86など)
*一部の外車(キャスター調整ネジが付いているもの)
などがあります。
メルセデスベンツはこのキャスター角がかなり
大きく、直進安定性を優先した設定になっている
のは有名な話です。
「車の直進安定性は車が決める。ドライバーの腕に
頼らない。」
という哲学に寄るとされています。
キャンバー:タイヤを車の前・後から見た時、「ハの字」に
なっているか、「逆ハの字」になっているかの
状態を示す角度です。
「ハの字」の状態がネガティブ・キャンバー
(ネガキャン)、「逆ハの字」の状態が
ポジティブ・キャンバー(ポジキャン)です。
標準サスペンションでこのキャスターが変更
できるのは、一部の車種です。
アフターパーツのサスペンションキットの中には、
調整可能な商品が多く見られます。
トー :トー或いはトーインとも言います。
タイヤを上から見た時に、前開きになっているか、
後開きになっているかの状態を示す角度です。
前開きの状態がトー・アウト、後開きの状態が
トー・インです。
フロントのトーは調整可能になっていますが、
リアのトーを調整できるのは一部の車種です。
アフターパーツのサスペンションキットの中には、
調整可能な商品があります。
(2)車検時サイドスリップの罠
車検の項目の中にサイドスリップの測定があります。
簡単に言えば前輪のタイヤの角度(トー)を測定する検査です。
車の後輪タイヤは平行についているとみなしています。
前輪タイヤには、車種によって少し角度がつけてあります。
縁石やキャッツアイにタイヤをぶつけただけでも、角度が
狂うことがあります。
この角度が規定外であると車検に通らないのですが、測定
するにはサイドスリップテスターと言うもので行います。
縁石やキャッツアイにタイヤを引っ掛ける力は、基本的に
全てフロントタイヤをトーアウト方向に狂わせます。
トーイン方向に狂うことは極く稀れなことです。
ハンドルが取られる感じがする場合は、前輪のサイド
スリップの調整が必要であると言うのが車検の考え方
ですが、本当に前輪のトーインが狂っているとハンドルが
取られるのでしょうか。
右前のタイヤがトーイン±0度、左前のタイヤがトーアウト
1度(前開き)の車があったとします。
この状態で走り始めると、最初車はやや左へ曲ります。
しかし、フロントタイヤはハンドルを切ることによって
動きますので、ハンドルを若干右に回せば、結局は左右共に
0.5度ずつトーアウト、左右合計1度(前開き)の状態で
安定し、車は真っすぐに走ります。
ハンドルの正中は微妙にズレて気持ち悪いかも知れませんが、
手を放しても真っすぐに走ります。
(3)リアのトーンで直進姓が決まる
これに対して、リアのトーインがズレている場合には、
車は真っすぐに走りません。
右後のタイヤがトーイン±0度、左後のタイヤがトーアウト
1度(前開き)の車は、左後のタイヤが外側へ行こうと
するため、車のリア(テール)は左へ行きたがり、相対して
車のフロントは右へ向きます。
従って、ハンドルを常に左に切らないと直進しません。
フロントのトーインが狂っている場合には、ハンドルを
修正した後手放しをしても直進しますが、リアのトーインが
狂っている場合には、常にハンドルを修正し続けなけらば
なりません。
手放し運転をした時に真っすぐ走らない主原因は、この
リアのトーインのズレが問題なのです。
しかし、このリアのトーインを測定することはまずあり
ません。
車検時に測定しないばかりか、新車納入時にズレていることも
多々あります。
ハンドルを取られるのでディーラーに点検を依頼したら、
「道路はカマボコ状に凸になっているのでそれが原因です。」
などと訳のわからない説明を受けた人も多いことでしょう。
広い駐車場で走らせても直進しなければ、リアのトーインが
ズレているのは明らかです。
リアのトーインを調整できない車が結構あります。
調整できないと言うことは、一見狂わないはずですが、
実際にはリアのホーシング(駆動系一式)自体が歪んで、
トーインがズレてしまうのです。
縁石などにリアタイヤをぶつけることにより、トーアウト
方向へ開いて行きます(フロント同様)。
新車で真っすぐに走らないと言うのは、リアのホーシングの
製造エラーか組付けエラーの可能性があります。
新車納入時に直進しない車をディラーに持込んで、リアの
ホーシングを引っ張って調整してもらった人の話も耳に
します。
(4)リアのトーンと交通事故
走行中の前走車を見ていると、1/4〜1/3の車は大なり小なり
真っすぐに走っていません。(リアのトーインがズレています)
斜めに走っているような車の場合、タイヤの片減りは著しい
ですし、ホイール(ハブ)への負荷が増大します。
これが乗用車でなく、大型バスやトラックで生じた場合、
さらに大きなトラブルを引き起こすことは容易に想像
できます。
1トンの乗用車と比較した場合、12トンのダンプカーに
12トンの荷物、さらに過積載6トンがある車を考えた場合、
重量比30倍、あるホイールの単位面積当りの負荷は、
二乗になって900倍にもなります。
乗用車の900倍の強度のホイールハブを設計できるのかは、
素人には想像もつきません。
タイヤ脱落事故の何割かは、このアライメントの狂いが原因で
あるとする専門家もいます。
もちろん、乗用車でもタイヤ脱落事故は起こりえます。
上記(3)の車の場合(右後のタイヤがトーイン±0度、
左後のタイヤがトーアウト1度の車)、車のフロントは
右に行きたがっていました。
この状態でコーナー(カーブ)を曲がると、
*右コーナーでは曲がりやすく感じ(オーバーステア的感じ)、
*左コーナーでは曲がりにくく感じ(アンダーステア的感じ)
ます。
そして、高速道路の連続下りカーブ、しかも雨、さらに
急ブレーキを踏まなければならない状況では、右カーブでは
車がクルリと回転してスピンして中央分離帯に激突する
可能性があります。
逆に、左カーブでは、ハンドルを切っている程には車が
曲がってくれず、カーブを曲がり切れずにやはり中央
分離帯に激突する可能性があります。
強引に曲げよう(カーブをクリア)とするとスピンや、
スピンの揺り返し(ドリフトのとっちらかり)が起こる
可能性もあります。
中央高速上り線の上野原IC付近の連続下りカーブを代表と
する高速道路下りカーブで多発する大事故の何割かが、
アライメント不調整が原因ではないかとする専門家も
います。
(5)4輪アライメント計測装置の疑問
最近では、高価高性能の4輪アライメント計測装置を導入する
ショップが増えてきました。
ディーラーから新車の持ち込みもあるようで、ようやく
ディーラーも新車でも真っすぐに走らない車があることに
気が付いてきているようです。
しかし、この4輪アライメント計測装置も正しい測定が
できる物が少ないのが現状のようです。
4輪アライメント計測装置は非常に大型・大重量ですので、
地盤沈下によって狂ってきてしまいす。
設置に際しては、地盤補強を行っている所が多いと
思われますが、それでも地盤沈下は起こるようです。
さらに、計測装置自体の調整が継続的に必要との話です。
4輪アライメント計測製造メーカーの営業マンが退職して、
アライメント計測のショップを始めました。
大手チェーン店のアライメント測定装置取扱いの講師と
して招かれるほど機器に精通してして、ディーラーから
新車の持ち込みも多いショップですが、それでも
アライメント計測結果にかなりの狂いがありました。
依頼した設定と車の挙動にズレがあるため、判明しました。
(アンダーステアが改善せず、手動で再計測したところ
リアのトーが5度以上ズレていました。)
ですから、人力による計測が今のところ最も信頼できることに
なります。
例えば、世界ラリー選手権(WRC)では、特殊トレーラーに
水平器をつけて水平を出し、その上で人力でアライメントを
計測・設定しています。
ボディーの左右の中央部下側(Bピラーの根元フロア面)に
基準点があり、そこから前後左右のタイヤのアライメントを
測定し調整します。
この方法を市販車に応用できるように開発されたのが、
「A-1ゲージ」です。
(6)スポーツ走行時のアライメント設定
キャンバー:ネガティブキャンバー(ネガキャン/ハの字)の
方が、コーナーで踏ん張れます。
コーナーで車がロールした場合に、アウト側の
タイヤが垂直に接した方が、安定するだろう
ことは容易にイメージできます。
メルセデスベンツやBMWのスポーツカーは、
リアにより多めのキャンバーがついていて、
ハイパワーのグレードになればなる程、
リアのキャンバー角が大きくなります。
国産のFRスポーツカーも近年ではこれに
ならい、リアにより多めのキャンバーがついて
います。
FRのハイパワー車はコーナー脱出時アクセル
オンでテール(が出やすいので、テールが
出過ぎないようにリアにより多めのキャンバーが
ついています。
逆にFFはフロントにより多めのキャンバーが
つけてあります。
コーナーでの操舵と駆動とをフロントタイヤが
兼任するため、基本的にアンダーステアであるため
です。
(FF車のリアは調整できない車が多いです)
昔の国産車はかなり大きめのポジティブ
キャンバー(逆ハの字)がついていました。
これは、サスペンションが軟らかい上に、
フル乗車で未舗装路(砂利道)を走るのを
前提に設定されていたためです。
サスペンションが大きく沈み込むと、
ポジティブキャンバー側→ネガティブ
キャンバー側へ変化しますので、最も沈み
込んだ時にタイヤが垂直になるように設定
されていました。
また、フロントにより多めのポジティブ
キャンバーをつけて、フロントの限界をわざと
低くし、ドライバーに限界を知らせる目的も
あります。
現在でもRV車には、横転防止の警告の意味も
含めて、比較的大きめのジティブキャンバーが
ついています。
世界ラリー選手権(WRC)を闘っているスバル
インプレッサWRCは、前後とも2度のキャンバー
(ネガキャン)が基本だそうです。
もちろんコース状況や、センターデフの
セッティング(マッピング)によって変わって
きます。
キャスター:各メーカーやショップから市販されている
サスペンションキット(スプリング&ショック)
でも、キャスターを変化させることはまずでき
ません。
一部のショップでは、Aアーム (ロアアーム)を
自作するなどして調整している所もあります。
特に、サーキット中心のショップに多いようです。
トー :フロントのトーインは0(ゼロ)と言うのが基本の
ようです。
しかし、若干トーアウトの方が回頭性が良く
なると言う話もあります。
若干トーアウトの状態では、左前のタイヤは
左に行きたがっていて、右前のタイヤは右に
行きたがっているのを打ち消しあって直進して
います。
ハンドルを左に切って、右前のタイヤが
トーアウト→0(ゼロ)に向った瞬間、右側に
行こうとしていた力がキャンセルされ、左前の
タイヤは益々左へ行きたがるので、車は左側に
回頭すると言うのが、この説の根拠です。
(まだロールが発生していない前の段階での
応答性の話です)
リアのトーは、車の回頭性に最も影響を及ぼします。
回頭性を良くするには、トーアウト設定、
ドリフトを止めるにはトーイン設定です。
最も曲がりにくい4WD車が低速ツイスティーな
コースを走る場合には、トーアウトを多めに、
最も曲がりやすいFR車が高速コースや滑り
やすい路面(雨やダートコース)を走る場合
には、トーイン設定にと言うように、車の性格や
走るコースによって調整が必要です。
(7)スポーツ走行時のタイヤ空気圧
多くのタイヤは、標準空気圧より若干低めの方がグリップが
良くなります。
アンダーステアが強い車の場合、フロントを標準空気圧より
若干低め、リアを標準空気圧より若干高めにすれば、アンダー
ステアの度合いを改善できます。
一般道では、標準空気圧より若干高めの方が燃費が良くなる
ことは、多くの雑誌に記載されています。
しかし、これはドライ路面の話であり、ウエット時には
滑りやすくなる可能性がある考慮しなければならない
でしょう。
[参考文献]
芸文社:雑誌プレイドライブ
「猿でもわかるサスペンション」
by故キャロッセ&クスコ社長
フロム出版:トータルバランス快速チューン
山海堂:雑誌RALLY Xpress
ニューズ出版:ハイパーレブ チューニング
&ドレスアップ徹底ガイドシリーズ
*説明文中の図解は
http://www.ucatv.ne.jp/~yokotetu/auto0001.html
にあります。
<文>横山歯科医院 YOKOYAMA DENTAL OFFICE
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